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耕すことの四方山話

24 日本の農業技術の海外輸出

道立農業試験場の専門技術員であった原正市さんが、退職後に北海道黒竜江省農業技術交流協会を通じ中国へ稲作の技術指導に赴きました。我が国は昭和42年頃に土付き苗育苗方式が開発され、田植機による省力移植栽培法が確立されました。土付き苗は省力化だけでなく、収量・品質向上にも画期的な成果をもたらし、原正市さんは、この技術を中国に普及しようとしたのです。何処の国でも農村地帯は排他的ですから、当初は日本の技術を理解して貰えず、随分ご苦労されたようです。ましてや中国人の場合は、一握りの共産党員が権力を握り理不尽なことを罷り通そうとする国ですから並大抵のことではありません。

彼はそれを心得ており、辛抱強く対応しました。

自ら水田に入って指導を続け成果が出てくると流石にそれを認めざるを得ません。その技術により中国の水稲収量は3倍となり、黒竜江省だけでなく中国全土にに広く普及するようになりました。中国政府は手厚く表彰し、彼の母校の岩見沢農業高校に胸像を建設してくれた程です。

日本の農業技術は水稲に限らず、畑作も酪農畜産でも優れた技術が多く世界に誇れるものです。水稲に次いで畑作の技術を要望されましたが、作物の種類が多く地域性が強いので水稲のようにはいきません。水稲は主食なので国のバックアップが期待できますが、畑作はそれが少ないのが悩ましいところです。

てん菜の移植栽培は、日甜が吉林省で技術指導をしていました。当時の中国では繊細過ぎる技術とされ定着しませんでしたが、それが改めて注目されるようになりました。中国のてん菜の収量は依然として10アール当たり2トンで、日本の三分の一以下です。4トン以上の収量になるならと、改めて移植技術の指導を求めてきました。最新式の移植機械は使い熟せないので、半自動移植機を輸入したいとの希望がありました。

紆余曲折はありましたが、内モンゴルはサークルと東洋農機、新疆ウイグルはホクエイ、サンエイグループが対応することになりました。

ビートハーベスタも加え2億円以上の取引となりました。移植技術の基本指導は、中国からの要望に応え、私が担当しました。現地は非常に熱心で輸出された機械も上手に使われ、それなりの成果を上げました。しかし、問題はそれからです。

続けて機械の注文がありましたが、突如として関税が高くなりました。日本側の企業も慈善事業ではないので、価格に上積みしましたが、それは駄目だと言うのです。当時の中国は、地方の役人が勝手に関税を課すことができました。なんとか双方納得をいく形で結着しましたが、新技術を提供しようとしている時に水を差されたようなもので意欲を殺がれてしまいます。

中国系の貿易会社の社長は日本に理解があって賢明だったのですが、こうした取引は、なかなか永続的な形にはなりませんでした。

中小企業は中国や韓国とは貿易はできないとするのが定説になっていますが、全く駄目ということではないようです。松山が韓国と、スターが中国と長く付き合っています。話を聞くと、相手の人間性だと言うのです。信頼関係が構築されれば特に問題はないと言い切ります。こうした関係をどのようにして創り出すかが課題でしょう。中国も韓国も日本の高度に進歩した農業技術を必要としているのは確かです。何とかうまい関係を作り出したいものです。

我々日本人は第二次大戦後にヨーロッパの技術に接触し驚愕したものです。ヨーロッパの技術に追いつけ追い越せがスローガンとなりました。日本人は典型的な農耕民族で、謹厳実直の性格です。これに高度の工業技術が加わり戦後30年を経過した頃から、農業機械も高水準化しました。昭和60年頃になると、中型機械ではヨーロッパを凌ぐようになりました。

平成に入ってバブルが崩壊し始めた頃から、世界的に離農が増え始めます。これは何故かと考えると、農業は何処の国でも政府が何らかの支援をしているものです。政府の財政が逼迫すると農業予算が削られ、中途半端では経営が成り立たずに離農が続出するという理屈です。離農が増えても、農業を衰退させることはできません。生き残りを懸ける農家は、離農した農家の土地を取得して規模を拡大し低コスト農業に挑戦します。ヨーロッパのメジャーは、これを受けて大型機械の開発にシフトしています。日本の農業機械はヨーロッパの技術にようやく並ぶようになったと思えた時に、大型化では大きく引き離されてしまいました。

日本の農業機械がヨーロッパに通用しないかと言えば、そうとは限りません。メジャーは大型にシフトしましたが、全ての農場に適用できるものではありません。中型を必要とする農場もありますから、ここに日本の精密な技術が適用できるはずです。

農業機械メーカーは何を以て社会に貢献するかといえば、技術を開発し農業の発展に尽くすのが第一義です。ヨーロッパに必要な機械を提供することを考えるべき時と言えます。ヨーロッパであれば歴史があるだけに日本の技術を理解し上手に利用するでしょう。

5年程前にヨーロッパの視察から戻り、今こそヨーロッパへ進出すべきだと通産局に進言し、需要拡大を見込めるならと、ヨーロッパの展示会に出展する予算を計上してくれました。工業会が中心になりドイツのハノーバ展に2度出展すると、とても好評だったので日本の農業機械メーカーは自信を持ってよいと思います。この場合も、現地の気心が通じ合える会社と提携できれば万全です。ドイツ人と日本人は相性が良いので、そう難しくないとも考えられます。

農業機械の需要拡大は近隣諸国からが定石ですが、技術や経済での格差が大きい場合は無理が伴います。アジアに対しては、先ずヨーロッパへの進出で経験を積んでから計画するのが妥当でしょう。ともあれ、ボトムプラウ、サブソイラ、プラソイラ、スタブルカルチ等の技術は世界水準で、何れの国へ持ち込んでも遜色ないといえます。

ただし、ヨーロッパの場合は粘土質土壌が多いので、強度面での一部改良が必要と考えられます。もちろんセーフティデバイスの装備で対応することはできます。

以前、フランスで開催された実演会を視察した時には、国情の違いを印象づけられました。旱魃が続いて圃場は乾燥し硬く固結化しています。とても実演は無理と考えられましたが、どの機種も全く怯むことなく実演に応じていました。湿潤地帯で軽しょう土の火山性土の多い日本ではとても考えられないものでした。

ヨーロッパのプラウは多くの場合セーフティデバイスが装備されています。障害になるものを取り除いている既耕地には不要と考えていましたが、実演を見て謎が解けました。フランスの場合、乾燥地帯が多く畑地潅漑を必要とする地域が多いのです。撒水は均一に行われるとは限りませんから、乾燥すると部分的に土壌硬度に大きな差が出てきます。粘土は、局部の乾燥の差により岩石のような状態になる場所もあります。ですから整備された既耕地でもセーフティデバイスが必要となります。

その地域の条件を知ることは大切であり、提携するメーカー、販売店と密接な関係を作って、勉強しておくことは欠かせないといえます。