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耕すことの四方山話

02 ドライブディスクプラウ

昭和50年代後期から平成初期のバブル期に、駆動型ディスクプラウが大ブームとなりました。ディスクハローに回転動力を加えたものです。

これは、鴻巣の農業試験場を定年退職し、全農の顧問を経て日の本に入られた方が、予てから暖めていたアイデアを形にしたものです。ロータリ耕に反発を持ち、理論武装を整えて、水田の土作りで乾土効果をもたらす機械はかくあるべきと訴えたことで、世紀のニューマシンと喧伝されました。この方は農業機械の世界では大変な実力者でもありました。

水田は水を張るので、下層に酸素が不足する還元層が形成されてしまいます。水稲の生育に好ましくないこの土壌を改善するためには、還元層の青い土を反転して空気に晒し乾燥させます。土壌は酸化し、褐色になります。無機態の窒素が作物に吸収されやすくなり、また微生物が活性化します。そのため水田では、和犁による反転・鋤込み耕が恒常的に行われ、プラウによる反転耕起に受け継がれてきました。これが乾土効果であり、水田土壌改良の原理原則と言われていました。戦後に発達した耕耘機が耕起と砕土を同時に行える高能率機械として評価されました。その流れが、トラクタ時代のロータリ発達を促し、何時の間にか乾土効果と言う言葉は消え去りました。化学肥料がふんだんに使える時代になり、堆肥無用論も出た程です。

ところが、驕れるもの久しからずで、昭和49、50年に全国的な冷害となりましたが、堆厩肥の施用を続けていた農家は殆ど被害を受けませんでした。これが契機となり全国的に土作り運動が展開されるようになりました。ドライブディスクプラウは、そんな雰囲気の中、日の本が水田耕起を原理原則に戻そうとしたものです。回転動力を加え、近代化した耕起用具が注目されない筈がありません。農家は競うようにしてこれを買い求め、北海道ではスター農機や東洋農機が畑作を前提に円盤を大きくして深耕できるような製品を発売しました。

そんな折り、祥孝さん(スガノ農機三代目社長)から「スガノ農機でも作るべきなのでしょうか。」と電話がありました。私は「ボトムプラウの販売も抑制されるであろうが、営業の第一線に立っている人達が、深耕、完全反転鋤き込み耕を標榜し奮闘している中で、プラウともハローとも言えない曖昧なものを売れと言うのは、余りにも酷で、士気にも大きく影響する。将来を考えて我慢すべき。」と返答し、「ドライブディスクプラウの方向は決して間違いではないので、使った人はボトムプラウが耕起の基本であることを逆に見出してくれるのではないか。」とも付け加えました。これは手塚さん(日の本へ行った試験場のOB)に東京の会議で逢った時「ボトムプラウには、とても敵うものではない。しかし、今の水田には少なくともロータリよりもまともなものを与えたくて頑張っている。」と話してくれたことがあったからです。

そうこうしている内に、一世を風靡したドライブディスクプラウは、バブルの如く消え去りました。これには、二つの理由が考えられます。一つは、プラウなのか、ハローなのか分からない曖昧さがあったこと。もう一つは、土地の生産性が著しく向上するとあって農家はこれに過度な期待を寄せていたからです。「土作りの原理原則に基づき基本に忠実であれば、必ずその効果は出現する、ただし土作りは、簡単なものでは無く年数を要する」と一言触れておけばよかったのでしょう。しかし、あのブームの中ではそれが憚られ、即効を期待していた農家の反発を買い、その反動は凄まじいものでした。

土作りは特別なことではなく普段の行いです。手を抜くこと無く、着実に励行していれば、必ずその効果は発現すると考えるべきでしょう。

しかも、その価値は平年作ではあまり認められないものなのです。ところが、一転して異常年となると、歴然とした効果となり、経営を潤し、利益をもたらすのです。

有名な篤農家の勝部征矢さん(北海道栗山町)も吉本博之さん(北海道芽室町)も、些かも土づくりに手抜きがありません。平年作においては、収量・品質に大きな差があるものではありませんが、やはり異常年になると威力を発揮します。彼等には冷害と言う言葉はありません。それが篤農家の本質であり、農業に従事するのであれば、改めて積年良土を反芻すべきと考えます。

ともあれ、ドライブディスクプラウは儚く消えてしまいましたが、良い教訓でした。ボトムプラウには何百年の歴史があります。これだけ続いているのは、それなりの理由があってのことであり、深耕・反転・鋤込みの原則を忘れてはならないと思慮します。

 

02-01 ドライブディスクプラウ
ディスクをPTOで回転させた。自転式と異なり、けん引抵抗が少なく、高速作業が可能であった。

 

02-02 ドライブディスクプラウの耕起状況
ディスクを回転させているので、粘質土壌でも円滑な作業は可能であった。反転性が乾土効果を高めると評価された。

 

02-03 ボトムプラウによる水田耕起
降雨後の高水分状態での耕起であるが、ボトムプラウは完全反転・鋤込み耕であり、理想的な水田耕起である。

 

02-04 草地リノベータ
ドライブディスクプラウの技術を活用したリノベータである。草地の排水性を良好にし、草生を活性化するのに効果的であった。