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耕すことの四方山話

13 長いも機械化栽培

北海道の川西農協が長いも栽培を始め、栽培面積が60ヘクタールを越えた頃、将来200ヘクタールの団地にしたいので、前提となる機械化について協力して欲しいと組合長が依頼してきました。

早速現地に入ると昭和30年頃から営農試験が実施され、トラクタの導入が早く機械好きが集まっている地域で、既にいろんな機械が工夫されていました。そのような地域で、技術を整理しながら一つの体系に組み立てるのですから、あまり難しく考える必要は無いと考えました。

ところが、どっぷり長いもの機械化栽培にのめり込むようになってしまいました。長いも栽培は土層・土壌改良に新しい分野を拓くものであり、非常に効果的であると感じ取ったからです。

先ず、播種床造成は、17センチ幅のトレンチャで1メートルの深さに掘削し土壌の上下層を混合します。一般的な長いもは、長さは60センチですから、それ以下の40センチは無駄ではないかと考えられますが、これは大切な無駄なのです。

テイラで長いも栽培していた頃は60センチの掘削がやっとでした。その掘削された場所は疎の状態で、水が集まってきますので、下層の水捌けが良い圃場でしか栽培できませんでした。しかし、長いも栽培が有利と判断されると面積を拡大させるために下層に粘土層がある湿性型火山性の土壌地帯でも栽培したくなります。そこで、粘土を破り1メートルの深さに掘削するのです。播種床に集まってきた水は下層に流れ、長いもの生育部は過剰な水に浸されることがなく、正常な生育が約束されます。

長いもの収穫には、プラウで下から浮上させるのが最もコストが少なくて済みます。しかし、人間は機械を使うのは好きでも機械に使われるのを好みません。

浮き上がってきた長いもをタイミング良く掴んで収穫する方法は、機械に使われるようなもので、人間の勝手は許されませんから、長く作業していると苛立ってきます。こんなことから、75センチの条間に、50センチ幅で80センチの深さに掘削し、そこに人が入って手で崩しながら長いも収穫する方法が良いとされました。長いもを全く傷つけないで収穫すると言うこともありますが、マイペースで収穫できるのが好まれたところです。

北海道の下層土は例外なく化学性が劣ります。有機物が殆ど含まれていないのは勿論、リン酸の吸収計数の大きい、問題の多い土壌です。

対策としては、土壌改良資材のリン酸や石灰を大量に施す必要があります。長いもの栽培では、播種造成と収穫時の掘削で相当量の下層土が作土に混ざるので、通常であれば大問題になるところですが、長いもに限っては問題になりません。長いもの粗収益は10アール当たり50~60万円もあったので、播種時に大量の堆厩肥や土壌改良資材を施用でき、化学性を改善しているので下層土が混ざってきても何ら支障はなかったのです。

さらに、一般的には長いもの後作に豆類を栽培することは不可能と考えますが、この場合は、化学性が改善されているだけでなく、深耕によって排水性も大きく改善された状態になるので、小豆などを栽培すると、通常よりも収量・品質に優れ、土地の生産性が著しく向上する結果になっていました。。

湿性型火山性土地帯は、下層に粘土が存在するので、心土破砕しても、暗渠が敷設されているとしても、まともな馬鈴薯は望めないとされていました。しかし、長いもの栽培によって地力のある土壌となり、排水性も改善されたので、馬鈴薯や、てん菜の収量はもちろんのこと、品質も向上します。それを知るや、カルビーポテトはすかさず川西に受け入れ施設を増設しました。

川西での長いも一貫機械化体系が完成すると、他の地域でも長いもを栽培するようになり、取引き価格は低下しましたが、一般畑作物よりも有利であることは変わりません。

機械化技術の進歩により、野菜は多労働という観念を払拭し、野菜であっても一般畑作物と同じ扱いという時代の幕開けでした。

機械化が進展したから、長いも栽培が普及し、結果として土層・土壌改良に大きく貢献したことは、時代の進歩を強く認識させられます。

余談となりますが、収穫時の条間掘削に用いていたチェーンバケット式トレンチャは低能率で、降水後の作業が困難だったので、小型の油圧ショベルを改良した作業機を製作しました。見事な作業ぶりだったのですが、助成金を申請すると、油圧ショベルは土木機械で農業機械ではないと見送られました。そこで、カタログ内容や仕様を変え掘削型長いも収穫機とすることで何とか合格することができました。

現在でも長いも農家は、収穫だけでなく小土木工事に活用して経営を豊かにしています。

 

13-01 チェーンロータリ播種床造成機

チェーンロータリバケットは、トレンチャとして使われていました。このバケットを外してナイフを取り付けると、1メートルの深さに播種床を造成できる。長いもの条間は75センチであり、2条用です。

 

13-02 チェーンロータリによる播種床造成状況

播種床の幅は17センチ、深さは1メートルの施行。掘削刃によって上下層の土壌は均一に混合されます。長いもは横に根が這う性質があり、肥料や堆厩肥は、表層30センチに前以て施行されています。

 

13-03 ホイールロータリ播種床造成機

チェーンロータリは構造がやや複雑で、耐久性に欠けることから、単純な構造のホイールロータリが開発されました。播種床の幅を17センチ、深さを1メートルにするのはチェーンロータリと全く同じです。

 

13-04 ホイールロータリによる播種床造成状況

播種床の中央に溝を切っているのは、播種床の中央に正しく播種するためです。種子が横に外れると、長いもは片寄った形状の生育となり、規格外品になることが多くなります。

 

13-05 造成した播種の断面

湿性型火山性土の圃場で40センチ程の下に粘土層がみられます。以前はこのような場所には長いもは栽培できないとされましたが、1メートル掘削混合することで排水性が改善され、長いも栽培が可能となりました。

 

13-06 長いも播種機

長いもを人手で播種するのは重労働です。持つ・歩く・屈むの三重苦だったからです。播種機が開発され、屈む作業は残りましたが、座乗しての播種作業は労働負担軽減と評価されました。

 

13-07 長いも播種

鎮圧ホイールでマーキングしたところに、芽を上にして置くだけ。播種機にはスタータの役割を果たす施肥機も取り付けられ、種子の周辺に施用されます。鎮圧とスタータの施肥で、長いもは順調に生育増収はもちろんのこと、品質も向上しました。

 

13-08 収穫中掘りトレンチャ

長いもの条間隔は75センチです。その中央に幅50センチ、深さ80センチに溝を開け、その溝に人が入り、両側を崩しながら長いもを手で彫り上げると、いもを傷つけることもなく能率的に収穫できます。

 

13-09 トレンチャによる中堀り状況

長いもの収穫には、堀上げプラウも開発されました。下から掘り上げると長いもが浮いてきます。これを掴んで収穫するのは、最も経費が少なくて済みます。しかし、精神的・肉体的負担が大きく、中堀りして収穫するのが合理的とされました。

 

13-10 トレンチャによる中堀り収穫

播種造成時に17センチの幅で1メートルに深耕、中堀りで50センチの幅で80センチ深耕。下層土は痩せていて、リン酸の吸収係数も大きい。一般的に、これを作土に混合するのは、問題ですが、長いも栽培に限り、化学性の手当はしてあるので、ほとんど問題は生じません。

 

13-11 収穫長いも

かって機械化は粗放農業と言われましたが、それは大きな誤解です。機械は上手に使い分けることによって、労働負担の軽減ばかりでなく、収量・品質を向上させるものです。長いもも機械化によって新しい時代が拓かれました。

 

13-12 小型油圧ショベルによる中堀り

機械化によって湿性型火山性土地帯でも長いもが栽培できるようになりました。長いも栽培によって土層・土壌改良ができましたが、降雨の多い年はトレンチャが使えないという課題がありました。それについては、特殊なバケットを付けた小型油圧ショベルの利用で克服しました。