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耕すことの四方山話

14 地下休閑耕プラウ

有珠山の噴火で、洞爺湖周辺の圃場が10センチ程火山灰で覆われたことがあります。火山灰は土壌ではなく鉱物ですから作物の健全な生育は望めません。これを解消するために、開発公社は45センチ耕起できるプラウを発注し、45~45センチ深耕すると、新しく降った火山灰は下層に移り、以前の作土が表層に戻って元の圃場戻すことができました。

洞爺湖周辺は花豆(大粒の菜豆)の栽培で知られています。収益性が良いので連作になりがちで、忌地現象が発生すると、大福が「小福」になり、買い叩かれる始末です。農家から、火山灰でも深耕プラウで見事に改善したのだから、厚い土層を活用して忌地現象も改善できないか、との要望が農協や普及所から試験場に寄せられました。

その要望に土壌肥料の担当者が反応し、ホイルトラクタで60センチの深さで耕起できる方法の検討を始めました。試作機はスガノ農機が担当することになりました。開発担当者は、事業に依存するのではなく農家自らが取り組める技術にしたいと考え、古い本に二段耕プラウ(2レベルプラウ)の記述もあり、これはそう難しくはないと判断したようです。

早速これをテストすると、多少の改良点はありましたが、地下休閑耕として有望であると判断しました。土壌肥料の担当者は、30センチ下の土壌が表層と入れ替わるのですから、化学性の改善に力を入れ、堆厩肥の投入は勿論、土壌改良資材も多めに散布するなど配慮しましたが、下層土は長年の多肥栽培で、表層から色々な養分が流下しており、化学性は以前のようには劣っていませんでした。農家からは、連作による忌地現象を解消したことから評価され、昔の「大福」に戻すことができたと喜ばれたものです。

土地に余裕が有れば休閑緑肥も良いのですが、面積の余裕が無い場合は、地下に休閑させる土地の縦利用があって良く、これから奨励する技術になり得ると考えられました。

十勝農試の病理の担当者がこれに着目し、小麦の連作障害対策に検討したいと言ってきました。小麦は連作に強い作物ですが、我が国は高温多湿の環境なので連作畑に病害の発生が多く連作が良いとはなりません。具体的な症状としては、根元の茎が枯れて倒伏してしまう病気が多発しているとのことでした。

防除での対策は困難で、確認できている唯一の方法は、耕起時に15センチ以下に完全に埋め込むと嫌気状態になり消減できたそうです。そこで地下休閑耕の利用となります。地下休閑耕は、このような仕事には長けています。先に美幌の試験で効果については立証済みで、耕すことが、こうした面にも活用できるとの自信を得ていましので、問題とされていた小麦の病害を難なく解消することができました。

実験した農家が馬鈴薯のそうか病対策にも利用できないかと言ってきました。そうか病の防除は難しく、プロジェクトチームを組んでも解決されていませんでしたが、この提案に地元の普及所も乗り気だったので挑戦してみました。仮に地下休閑耕で対応できるとなれば、これはこれで、面白いと考えたものです。

しかし、残念ながら地下休閑耕でも、そうか病の発生を抑制することはできませんでした。そうか病は土性そのものに関係することや、馬鈴薯は有機物に不足する土壌では健全に生育しないものです。研究を継続したい思いがあったのですが、熱心であった普及員が転勤となり結論に至っていません。

道外での地下休閑耕は、青森県の大根圃場に使われ好評となり、九州でもかなり使われていました。その中でも、特に面白いと感じたのは、ミニトマトのハウス栽培です。トマトは比較的連作に強いのですが、繰り返すほどに防除回数が多くなり、農薬代への負担が年々増加するたけでなく、徹底した土壌消毒が必要になると、作土を入れ替えるべきとされ、近在に良土があるとしても経費負担は莫大になります。地下休閑耕なら、有機残渣をそのまま鋤込み、上下層完全反転で入れ換えることができるので資材に対する経費を押さえながら、一作も休まずに栽培できます。鹿児島の実例では期待以上の効果に、実践した農家はとても喜んでいました。

地下休閑耕プラウ(二段耕プラウ)は、ホイルトラクタで深耕が可能、上下層の完全入れ換えが可能という以外にも、段差が30センチ程度までなら、水田の区画拡大などにも利用できます。レーザーレベラーとの組み合わせで手軽に工事できるのも魅力となります。今後、更に色々な利用法が工夫され、活用範囲は拡大するでしょう。

 

14-01 混層耕プラウ

10~20センチ程度の火山灰堆積なら、かっての大型混層耕プラウを使って、降った火山灰は下層に入れてしまえばよいとされました。特に難しくはなく、かなりの面積の農地を復元できました。

 

14-02 地下休閑耕プラウ

高級菜豆の連作で、忌地現象が発生しました。圃場の土層は厚いので、何とかこれと入れ換えできないかとされました。ホイールトラクタで60センチの耕起を要望されました。2段耕なら可能であると判断し現地試験に入ったりました。

 

14-03 2段耕プラウの作業状況

ホイールトラクタの右タイヤは30センチ耕起の壢底を走行するので、トラクタの傾きは同じです。第一ボトム(心土プラウ)が、その下30センチを耕起し、第二ボトム(作土プラウ)が表層30センチを耕起して開けられた心土に鋤込みます。上下層入れ換えによる60センチ耕起が可能になりました。

 

14-04 小型2段耕プラウ

ミニトマトのハウス栽培で上下層入れ換えが可能かとされ、小型2段耕プラウを製作したました。20センチ(第一ボトム)+25センチ(第二ボトム)で45センチを目標に開発しました。

 

14-05 第2ボトム(作土プラウ)の耕起深

小型トラクタは四輪駆動でも45センチ耕は困難と考えられましたが、低速作業では特に問題は認められませんでした。熟畑化していたので、けん引抵抗は少なかったと考えられます。

 

14-06 栽培状況

下層土を作土にするについては、下層土は痩せた土壌でなので、かなりの土壌改良資材が必要と考えられましたが、長年の多肥料栽培だったので、それ程問題のある土壌ではありませんでした。少ない費用で土壌改良に成功しました。

 

14-07 ミニトマトの生育状況

土地に余裕があれば、休閑緑肥も可能ですが、我が国の場合、困難な場合が多いのが現実です。土地を縦に使って、疲弊した土壌を下層に休ませて再生を促すのは我が国らしい発想と言えます。

 

14-08 3段耕プラウ

約300年前に楢前山の大噴火で、千歳市一帯に1メートルもの火山灰が堆積しました。一般的には、300年で作物の生育できる土壌になると言われますが、この場合、粗粒火山灰だったので、そうはなりませんでした。

 

14-09 3段耕プラウの反転作業

1メートル下に爆発以前の良質土が存在するなら、それを反転して作土に利用できないかとなりました。昭和35(1960)年にマンモスプラウを製作して挑戦しましたが、動力不足で満足な作業は行えませんでした。しかし、現在では動力源に不足することはありません。

 

14-10 土層断面図

左側が原土です。1メートル下に黒土が見えるので、1.3メートル耕起して半分以上作土に混合できると考えました。右側が耕起後の断面です。第2層の粗粒火山灰が最下層に入っています。約60パーセントの昔の土壌が作土に混合されており、ようやく念願の土層改良に成功しました。