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耕すことの四方山話

18 ゴムクローラトラクタ

三菱の農業用クローラトラクタを開発した頃、忽然とモロオカからゴムクローラトラクタが販売されて世上を賑わしました。舗装道路を走行できるクローラトラクタとなれば待望のトラクタであり、比較的安価だったので人気となりました。

水田農家も規模拡大が進んでおり、高能率トラクタを待ち望んでいましたし、元々は、土木工事の運搬用として開発されていたので、マニュアルスプレッダを搭載して活用するケースも現れました。軟弱路盤だけでなく傾斜地にも強いとなれば、大規模野菜農家の評判も呼びました。

このトラクタは頻繁に道路を走行するのですから、正式に然るべき機関で検定して貰うのが良いと進言しましたが、当時の社長は、とても豪放な方で、きっぱり断わられてしまいました。しかし、広く普及させようとするならば、きちんとした手当は必要です。

その後、流石に少しは考えるようになったようで相談を受けると、驚いたことに社内でのけん引力テスト等も行っていなかったようで驚きました。

とはいえ、数多くの農家の期待を背負ったトラクタですから何とかしたいと思い、機械を研究している北大の先生に相談すると、あのトラクタはHSTの新しい油圧式トラクタなので、大学としても興味があるとのことでした。そこで、スガノ農機の圃場で、一通りの動力試験、作業試験を行うことになりました。

昭和三十30年代後半、北海道では官民協同で、ほぼ全機種のトラクタ性能試験を行っていました。これは、国が正式鑑定を行い出す以前のことです。そんな経験もありましたので、特に負担とは考えませんでした。

先ずは、油圧試験です。油圧装置を確認すると、上げる、下げるだけで極めて単純な構造でした。オペレータは油圧レバーを操作し作業機の位置を確認しながら作業するものです。ドラフトコントロールが装備されていないのは良いとしても、作業機の高さを微妙に調整できないのでは作業者が困惑します。一般のトラクタと同じような油圧作動にするべきと進言しました。

ロータリテイラで耕起作業を行っての燃料消費量測定等、次々と試験を行っていくと試験の途中で熟練のオペレータが休みたいと訴えてきました。聞いてみると、左右二本のスキッドステアリングの操作は、一時もハンドルを離せないので絶えず集中が必要で非常に疲れるとのことでした。

丸ハンドルなら遊びもあり、両手で握りしめなくても片手で操作できます。農作業は連続単純作業なので、そのような「ゆとり」が必要なのです。

土木現場での運搬作業は、走行距離も短いのでハンドルを握りしめたままでも何ら差し支えありません。むしろ握りしめていた方が効率的と言えるでしょう。農作業とは大きな違いです。

しかし、このスキッドステアリング方式は、農業者が負担になる技術は認められないと諭しても、これは、当社の発明でアピールポイントとのことで納得してもらえませんでした。

さらには、オペレータは左右の車輪の位置を基準にして運転しますから、できるだけ広い視界が望まれます。キャビンの構造だけでなく、フロントグリルもスマートにすると作業がしやすいとオペレータの共感を得ることができますが、この部分も十分ではありませんでした。

絶対的な自信を強調されていた、けん引力については、スリップ率20パーセント時で機体重量の70パーセントなので、標準的な結果と伝えると、機体重量より曳くはずだと主張され、理論上有り得ないと話しても、納得しない風情でした。

このように、当初は基礎的な改善に対して目を向けない頑固さでしたが、トラクタの販売量が多くなり、沢山の農家やディーラーに接触すると放ってもおけず少しずつ改良を進めたようです。

しかし、そうこうする内に農業トラクタメーカーがゴムクローラトラクタを製造販売するようになると、モロオカのトラクタは目立たなくなってしまいました。ゴムクローラトラクタに先鞭を付けたのに惜しまれます。

モロオカの社長は私と同年の生まれということもあり、札幌に来ると頻繁に事務所に立ち寄ってくれました。ロシア視察の準備をしている時に寄られた時には、「俺も行けないか。」と希望されました。極東ロシアの農業事情視察なので興味を持っていたのだと思います。ロシアでは、行く先々で日本のトラクタが欲しいと言われ、市場として悪くないと感じたようで積極的に情報を集めているようでした。私はトラクタの整備がどの位できるかを調査しようと、モータープールの整備状況などを見て歩きましたが、とても粗末なもので日本のトラクタを扱うことは無理と判断しました。

ある日、社長が「ロシアに俺のトラクタを三台寄贈したい」と事務所にやってきました。

あれだけトラクタを欲しがっていたのだから、今がビジネスチャンスだと言うのです。ロータリを付けて出荷しましたが、その後の消息は不明です。

気宇壮大な人でしたが無茶が多いとも感じました。それでも会社が成り立っているのは、経営、開発に相当の人物がいるからだろうなと思われました。

苫小牧に土地を買い求め、工場を建設し、少なくとも百人雇用したいとのことでしたが、その土地は今もそのままになっているのは残念です。しかし、ゴムクローラトラクタを世に出した功績には計り知れないものがあります。メジャーでは簡単に出来ないことをやり遂げたのですから讃えるべきだと思います。

 

18-01 自走式マニュアスプレッダ

ゴムクローラトラクタの元型は土木工事用の運搬車でした。軟弱路盤の走行を苦にせず、傾斜地も安定して走行できるとなれば、マニュアスプレッダを搭載して自走式にすることもできます。

 

18-02 ゴムクローラトラクタ

トラクタメーカが製造を始めれば、最初に開発されたトラクタの問題点を解消して、農家が取扱い易いものにします。丸ハンドル操舵とし、ホイールトラクタ感覚で操作できるものも販売されるようになりました。

 

18-03 スイートコーンハーベスタ

スイートコーンハーベスタに限らず自走式ポテトハーベスタなども開発されてきました。回行性に優れているので、枕地の面積を少なくできる、安定走行ができるので、正確に畦に沿って作業できる等々、大変好評でした。

 

18-04 融雪剤散布機

我が国でゴムクローラが発達したのは、水田面積が広いので、軟弱路盤を安定して走行できるゴムクローラに着目されたことによります。自脱式コンバインでその走行性が認められ、そのボディはニンジンハーベスタや融雪剤散布機などにも利用されています。