2021年 上期 総合カタログ スガノ農機 株式会社
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作物生産に適した土とは?“土づくり”が再び注目を浴びつつありますが、作物生産に適した良い土について改めて考えてみたいと思います。教科書的には「物理性」「化学性」「生物性」が優れている土が農作物にとって良い土と言われています。野球の世界で例えるならば、走・攻・守の3拍子揃っているイチロー選手と言ったところでしょうか?具体的には、良い土かどうかの判断基準は、以下のようにいくつかのポイントがあります。土の「物理性」の良否は❶有効土層(根が伸長できる深さ)の厚さ❷通気性、透水性(排水性)の良否❸有効水分量(植物が吸収できる水分)❹礫含量な手賀沼干拓事業によって明治から利用されている水田の断面です。作土は13cm、その下にすき床層が観察できます。作土以外は、2層に分かれるグライ層で、深さ60cm付近までは有機物によって黒色系ですが、それより深い所は有機物が少ないため、青色を示しています。また、その下の90cm付近から湧水があり、常に酸素と触れるため、褐色の鉄さび色となっています。グライ層は根が呼吸できないため、暗渠施工等で下層の排水性を改良し、グライ層の出現深度を下げる必要があります。千葉県我孫子市細粒質斑鉄型グライ低地土富良野盆地の縁に位置する緩斜面上で、アスパラガスを連作している畑の断面です。アスパラガスの根は深さ80cmに達し、表土は厚く黒いので、一見すると有機物に富んでいるように見えますが、砂の表面が有機物で黒くコーティングされているため、黒さが増して見えます。下層には十勝岳から噴出したと考えられる丸い軽石や細かい火山砂が多く含まれます。全体的に粘土が少なく粗い砂が多いので、透水性や排水性は良好ですが、保水力が低く、過乾のリスクが危惧されます。北海道中富良野町中粗粒質普通褐色森林土農研機構 農業環境変動研究センター環境情報基盤研究領域 土壌資源評価ユニット上級研究員 前島勇治 氏スガノ農機は、研究機関と共同で土壌を探求する活動を開始しました。取り組んでいく指針について、参加研究員の前島氏よりご寄稿いただきました。フルボディとしての土を見るフルボディとしての土を見るどで評価されます。「化学性」は、❶保肥力(肥もち)❷適正な養分の有無❸土壌のpHなど、「生物性」は、❶微生物相の多様性❷病原微生物が少ない❸土壌動物の生存などが挙げられます。しかし、農地は必ずしも物理性・化学性・生物性の3拍子が揃った土ばかりではないことは周知のとおりです。また、従来の土壌診断は、主として作土(表土)の化学性評価が中心であり、下層土の肥沃度評価(下層土のエダフォロジー)は重要であることは認識されているものの、生産現場への理解・普及は十分ではないと思われます。そこで改めて注目していただきたいのが、表土から下層土までの状態を総合的に評価する「土壌断面調査」です。従来の表土を対象とした土壌診断を我々が毎年受診する“定期健康診断”と例えるならば、約1mの土の顔つきを調べる土壌断面調査は、我々の頭の先からつま先までの健康状態を総合的にチェックする“人間ドック”と言えるでしょう。日本の土は世界の土と比べる調査を行った代表的な土壌断面79

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