2021年 下期 総合カタログ スガノ農機 株式会社
83/128

資料提供:農研機構 農業環境研究部門 https://www.naro.arc.go.jp/niaes/耕作放棄後に、再び農地として利用されたほ場断面です。調査時は子実コーン2作目とのことで、根の大部分は0~40cmに集中し、細い根が深さ80cmまで達していました。このほ場は周囲の田畑より一段高い所に位置するため、排水性は良好で、過去の水田時に灌漑水の鉛直方向への浸透で形成されたと考えられる鉄・マンガンの集積が深さ30~39cmに見られます。また、深さ35cmまでプラウが入っており、特に表土(0~25cm)は有機物施用による団粒化が進みつつあるようです。山口県山口市①細粒質普通褐色低地土槙野川の氾濫原に位置する水稲連作ほ場の断面です。作土は、砂と粘土が半々の壌土、下層土は砂壌土から壌質砂土へ徐々に粗くなっており、灌漑水の浸透に伴い、作土から鉄やマンガンが移動集積した層の形成も見られるので、全体として透水性の良い乾田と言えます。作土直下の鉄集積層はやや硬く(ち密度:21mm)、基盤整備時の締固めにより形成されたと考えられ、根は22cmより深い部分には達していません。畑転換の場合は、徐々に作土深をかせぎ、根域拡大を図る必要があります。山口県山口市②粗粒質下層褐色低地水田土(盛土造成相)●土が締まる(耕盤層の形成)状態の見える化土が締まる(耕盤層の形成)とは?(写真提供:大倉利明氏)(写真提供:大倉利明氏)0作土層612(cm)20第三層圧密を受けて孔隙が減少2632(cm)農業環境インベントリー展示館(つくば市)でのモノリス展示土の館(上富良野町)でのモノリス展示土壌モノリスは、つくばと上富良野でご覧いただけます団粒間に孔隙ありここで圧密を受けた土層を見える化してみました。これは土壌断面調査の際に土壌断面から土塊を崩さずにそのまま取り出し、特殊な樹脂で固めて、研磨した標本です。耕起された作土(深さ0~12cm)は、団粒構造が発達し、その団粒間には多くの隙間(孔隙)を観察できます。一方、圧密を受けて締まった土層(深さ20~32cm)では、孔隙が少なく、カベのようになっていることがわかります。このような土層では土壌硬度が増して、根はりが制限を受けるため、定期的に耕盤層を破壊することが必要となります。安定した収量と高品質の農作物を得るためには、“土づくり”は欠かせません。その第一歩は適切な耕起・耕うんであり、作物栽培により消耗した栄養分を適切に補給し、有機物の投入による団粒化を促し、土壌侵食を最小限に留めることではないでしょうか?また、農地の持続的な利用には適度な休閑も必要でしょう。世間では、働き方改革が声高に叫ばれておりますが、農地も時には休ませて、定期健診に加えて、農地の総合検診として「フルボディとしての土を見る」ことをぜひおすすめしたいと思います。82

元のページ  ../index.html#83

このブックを見る